毒親の元から脱出し家出した夜。どこかに逃げたい。
初めて家を飛び出した夜
母の当たりがひどくなってきたある日のことでした。
うめおにぎりはリビングで漫画を読んでいたのですが、何かが母の逆鱗に触れました。
「漫画ばっかり読んでんじゃねえ!!」
と言って漫画を取り上げられ、そのままビリビリ!と漫画を真っ二つに破られました。
この頃の母は、目につく場所でうめおにぎりが遊んでいるとイライラするようで、ゲームをしていればゲームばかりするなと怒り、音楽を聴いていれば音楽ばかり聴くなと怒り。
学校の課題が終わって遊んでいても関係なく、とにかくうめおにぎりが母の目の届く場所で呑気に遊ぶことが気に入らないようでした。
それなのに、うめおにぎりが子供部屋に引っ込むと、それも腹が立つようで、
「飯の時だけ降りてきやがって」
と後から嫌味を言われるので、なるべくリビングで、母が見たい番組がうつるテレビをボーっと見て過ごすことが怒られにくい道でした。
ですが見たくもないクイズ番組を眺めていても退屈なので、テレビを見るふりをしながら体育座りした膝で隠して漫画を読んでいました。
それに気づいて、だんだんとイライラしてきた母に、漫画を破られたのでした。
その時、
もうやだ。
この親といたくない。
という思いを冷静に抱きました。
そうだ、出て行こう。
うめおにぎりは、母が破って床に叩きつけた漫画はそのままにして、何も言わずに玄関を開けました。
後ろから、母が
「出てくのか?ああ出てけ出てけ!よかった!」
と叫んでいる声がしましたが、構わずに家を出ました。
自分の携帯なんかない時代でした。
財布も持たず、手ぶらで夜道を歩いて行きました。
その時、近くの祖父母の家に逃げ込めば良かったのに、なぜだか今回もその発想に至りませんでした。
どこに行こうか考え、とりあえず学校にでも行こうかな、と何となく思いついていつもの通学路を一人歩いて行きました。
もう辺りは真っ暗でしたが、ある程度の街灯はあるし、通い慣れた道なので恐怖はありませんでした。
一度だけ、母が追いかけてくるかと思って後ろを振り向いてみましたが、誰も追ってきませんでした。
なぜか、不思議とワクワクした気持ちでした。
今まで一方的に母にやられるばかりだったのに、家を出るという行動を取れた自分に感動していました。
私は母のサンドバッグじゃない!私だってやればできる!と。
それと、母の支配する閉鎖された空間から外に出たら、こんなに静かで広い世界が広がってるんだな、と実感していろいろ自分を縛っていたものから解放された気分でした。
でも、夜も遅い時間だし、もしかしたら変な人が現れて殺されるかもしれないな、とも考えました。
ですが、うめおにぎりは「殺されてもいいや」と怖いものなしだったんです。
うめおにぎりが殺されたら、さすがに母も自分のせいだと思って苦しむだろうと思ったからです。
そんなことを思いながら歩いていくうちに、中学校に到着しました。
が、時間は夜の10時過ぎ。学校の灯りは消えていて、門も閉まっていました。
門を飛び越えて敷地内に忍び込んで学校で夜を過ごすことも考えましたが、門を越えても建物の扉も閉まっているようだったので断念。
さて、どうしようか。
行き当たりばったりの夜の散歩でした。
ふと、周りを見渡すと、すぐ近くにコンビニの灯りが見えました。とりあえずあそこに行こう。
うめおにぎりはコンビニに入り、お金は無いので立ち読みをして過ごしました。
「きみ、家出?」
ハッとして振り返ると、コンビニ店員のお兄さんでした。
何時間も一人で立ち読みを続ける子どもがいつまでも帰らないのを見て、声をかけたようでした。
「えっと・・・まあ・・・」
「まあ、外でウロウロするよりは安全だからね」
それだけ言って、店員のお兄さんはレジに戻っていきました。